豆知識:着物・帯の仕立てと着物のお手入れについて ~着物の仕立て~ 着物は反物を各パーツに裁ち縫い合わせてつくります。袖、身頃、衽(おくみ)、衿などで構成されていて、ほどけばまた一枚の布になります。 ~着物の裁ち方(着物の表布)~ 着物は並幅約九寸八分(37cm)の一枚の布を裁ち、縫い合わせてつくります。 裁ち方はすべて直線です。反物の長さは、お着物をお仕立てする際、通常、身長とヒップから算出します。だいたい12m前後になります。反物の裁断図はパーツ別に袖×2、身頃×2、衽(おくみ)×2、衿×1、共衿×1、となります。 表布のほかに細かい付属品が必要です。衿裏、八掛(裾回し)、胴裏、衿芯など 着物の種類に合わせて、以上のものを用意した上で、表布を裁断します。そのパーツを縫い合わせて着物を仕立てあげます。 着物の仕立ての種類は、袷仕立と単衣仕立があります。袷は、裏(胴裏と八掛)をつけて仕立てたもので、これに対して裏をつけずに仕立たものが単衣です。 ~誂染 (あつらえぞめ)~ 着物を買い求めるとき、自分の寸法や年齢に合わせての色柄で一から染めることができます。 白生地の地紋を選んだり、裄(ゆき、袖の長さ)の長い人は生地幅の広い反物を使用し寸法を合わせます。 次に、色見本を見ながら話し合い、着物の色柄を決めます。悉皆屋(しっかい屋)は白生地に「墨打ち」を行ってから、染屋に注文します。 ※「悉皆」とは、着物に関する相談を受けてくれる、今でいうなら、着物プロデューサーのことです。 ※「墨打ち」とは、パーツの裁断で目印になる「記号」です。 ~帯の仕立て~ 着物と同じように、帯にも仕立てが必要です。帯の種類や素材、目的に合わせて仕立て方を決めます。 帯には一般的に帯芯を入れますが、厚みは好みで調節することができます。 ~袋帯~ 適度な厚さの帯芯を入れて、手先とたれ先をかがります。 袋帯の織り方には二種類あります。 表と裏を最初から袋状にして織ったもの。 もう一つは、表と裏を別々に織り、ミシンで縫い合わせたものです。 どちらも、基本的には帯芯を入れて仕立てます。 ~なごや帯~ なごや仕立て、鏡仕立て、付け帯(二部式)などがあります。 なごや仕立て:お太鼓の部分、三尺(約114cm)を幅八寸くらいに、胴に巻く部分を半幅に仕立てる方法。 鏡仕立て:胴に巻く部分を半幅にしないで、開いて仕立てる方法で、背の高い人に合わせたバランスがとれる。 付け帯:帯結びを楽に行うために工夫されて、胴に巻く部分、お太鼓の部分、手先の三つを組み合わせたもの。 ~紋を入れる工程~ 紋は家のお印として儀礼的な装飾に用いるもので、和服や調度品などに付けられています。 紋の起源は平安時代の中期頃、動植物や天文、文字などの形をとって衣服や武具などに付け、持ち主を明らかにしたことから始まったとされています。 ~紋の格と種類~ 紋の格は、技法と図柄の表現形式によって決まり、技法は染めと刺繍に大別されます。 染め紋には紋の形を白く染め抜く「染め抜き紋」や、色で紋を描くものがあります。 染め抜き紋が最も格が高く、ほかの染め紋や、刺繍による縫い紋は略式となります。 ~染め抜き紋(染め紋)~ 染め抜き紋は、「染め抜き」と言うとおり、地色を抜いて紋を入れます。 色無地や付下げなどは、黒留袖や喪服と違い白い円(石持ち)がなく紋を入れる為に白地を作らなければなりません。抜染剤や抽出剤などを使い、ご指定の家紋の形をした型紙を利用して漂白を行い、その上に手描き紋を入れます。 ~縫い紋~ 使い勝手がよく重宝されます。お好きな色の糸で紋を入れることができます。 家紋を金銀糸・共色濃淡糸で忠実に刺繍したものは、軽い略礼装用に。 多彩な色糸使いで家紋をアレンジしたり、絵画的なデザインで表したりすると、非常に趣味性の強いおしゃれ着向きにもなったりします。 ~着物のお手入れ~ 少しの手間をかけるだけで、長く大切な着物を愛用することができます。 着物は洋服以上にデリケートです、お気に入りの着物を長持ちさせるためにも着物のお手入れが必要です。 ~洗い張り~ 着物をほどいて、一枚の布にして洗濯する方法です。 染め替え、リフォームなどを行う場合は、着物を一度ほどきます。着物はもともと一枚の長い布を裁って着物の形に縫ったものです。ほどいて縫い合わせれば、元の形に戻るという仕組みのため、いろいろなメンテナンスができます。 しかも、仕立て直す際に同じように縫う必要はなく、しみの落ちない部分を移動するなども可能です。着物が日常着だったころの日本人は、定期的にこうした手入れを自分で行ってきました。 ~しみ抜き・カビ落とし~ 繊維につくしみは、水溶性と油性に大別されます。 醤油やジュース、酒、汗などの水溶性のしみは、主に洗剤と水で落とします。 化粧品などや、ドレッシングなどの油性のしみは、揮発性の油で落とします。 カビが表面についたものは丸洗いをした後にカビ落とし加工をします。 カビが繊維に入り込んだものは、着物をほどいて洗い張りをし、その後で処理をします。 しみもカビも気がついたら、早めに専門店へ相談をしてくださいね。 ~染め替え~ 染め替えとは染め直しともいい、着物の地色を変えることを言います。 小紋の柄を替えたり、色無地を小紋にしたり、と自由自在です。 もとの柄を生かして地色だけ染め替えることを「地色替え」といいます。染料がしみ込まないように模様の部分に糊を置いて染め直すため、絵羽の部分に箔や刺繍などがあっても大丈夫です。 模様も含めて全体に地色をかぶせる(目引き染)や、現状のものに刺繍などで模様をプラスする方法もあります。 date:2017.12.09 ←前の記事へ →次の記事へ
~着物の仕立て~
着物は反物を各パーツに裁ち縫い合わせてつくります。袖、身頃、衽(おくみ)、衿などで構成されていて、ほどけばまた一枚の布になります。
~着物の裁ち方(着物の表布)~
着物は並幅約九寸八分(37cm)の一枚の布を裁ち、縫い合わせてつくります。
裁ち方はすべて直線です。反物の長さは、お着物をお仕立てする際、通常、身長とヒップから算出します。だいたい12m前後になります。反物の裁断図はパーツ別に袖×2、身頃×2、衽(おくみ)×2、衿×1、共衿×1、となります。
表布のほかに細かい付属品が必要です。衿裏、八掛(裾回し)、胴裏、衿芯など 着物の種類に合わせて、以上のものを用意した上で、表布を裁断します。そのパーツを縫い合わせて着物を仕立てあげます。
着物の仕立ての種類は、袷仕立と単衣仕立があります。袷は、裏(胴裏と八掛)をつけて仕立てたもので、これに対して裏をつけずに仕立たものが単衣です。
~誂染 (あつらえぞめ)~
着物を買い求めるとき、自分の寸法や年齢に合わせての色柄で一から染めることができます。
白生地の地紋を選んだり、裄(ゆき、袖の長さ)の長い人は生地幅の広い反物を使用し寸法を合わせます。
次に、色見本を見ながら話し合い、着物の色柄を決めます。悉皆屋(しっかい屋)は白生地に「墨打ち」を行ってから、染屋に注文します。
※「悉皆」とは、着物に関する相談を受けてくれる、今でいうなら、着物プロデューサーのことです。
※「墨打ち」とは、パーツの裁断で目印になる「記号」です。
~帯の仕立て~
着物と同じように、帯にも仕立てが必要です。帯の種類や素材、目的に合わせて仕立て方を決めます。
帯には一般的に帯芯を入れますが、厚みは好みで調節することができます。
~袋帯~
適度な厚さの帯芯を入れて、手先とたれ先をかがります。
袋帯の織り方には二種類あります。
表と裏を最初から袋状にして織ったもの。
もう一つは、表と裏を別々に織り、ミシンで縫い合わせたものです。
どちらも、基本的には帯芯を入れて仕立てます。
~なごや帯~
なごや仕立て、鏡仕立て、付け帯(二部式)などがあります。
なごや仕立て:お太鼓の部分、三尺(約114cm)を幅八寸くらいに、胴に巻く部分を半幅に仕立てる方法。
鏡仕立て:胴に巻く部分を半幅にしないで、開いて仕立てる方法で、背の高い人に合わせたバランスがとれる。
付け帯:帯結びを楽に行うために工夫されて、胴に巻く部分、お太鼓の部分、手先の三つを組み合わせたもの。
~紋を入れる工程~
紋は家のお印として儀礼的な装飾に用いるもので、和服や調度品などに付けられています。
紋の起源は平安時代の中期頃、動植物や天文、文字などの形をとって衣服や武具などに付け、持ち主を明らかにしたことから始まったとされています。
~紋の格と種類~
紋の格は、技法と図柄の表現形式によって決まり、技法は染めと刺繍に大別されます。
染め紋には紋の形を白く染め抜く「染め抜き紋」や、色で紋を描くものがあります。
染め抜き紋が最も格が高く、ほかの染め紋や、刺繍による縫い紋は略式となります。
~染め抜き紋(染め紋)~
染め抜き紋は、「染め抜き」と言うとおり、地色を抜いて紋を入れます。
色無地や付下げなどは、黒留袖や喪服と違い白い円(石持ち)がなく紋を入れる為に白地を作らなければなりません。抜染剤や抽出剤などを使い、ご指定の家紋の形をした型紙を利用して漂白を行い、その上に手描き紋を入れます。
~縫い紋~
使い勝手がよく重宝されます。お好きな色の糸で紋を入れることができます。
家紋を金銀糸・共色濃淡糸で忠実に刺繍したものは、軽い略礼装用に。
多彩な色糸使いで家紋をアレンジしたり、絵画的なデザインで表したりすると、非常に趣味性の強いおしゃれ着向きにもなったりします。
~着物のお手入れ~
少しの手間をかけるだけで、長く大切な着物を愛用することができます。
着物は洋服以上にデリケートです、お気に入りの着物を長持ちさせるためにも着物のお手入れが必要です。
~洗い張り~
着物をほどいて、一枚の布にして洗濯する方法です。
染め替え、リフォームなどを行う場合は、着物を一度ほどきます。着物はもともと一枚の長い布を裁って着物の形に縫ったものです。ほどいて縫い合わせれば、元の形に戻るという仕組みのため、いろいろなメンテナンスができます。
しかも、仕立て直す際に同じように縫う必要はなく、しみの落ちない部分を移動するなども可能です。着物が日常着だったころの日本人は、定期的にこうした手入れを自分で行ってきました。
~しみ抜き・カビ落とし~
繊維につくしみは、水溶性と油性に大別されます。
醤油やジュース、酒、汗などの水溶性のしみは、主に洗剤と水で落とします。
化粧品などや、ドレッシングなどの油性のしみは、揮発性の油で落とします。
カビが表面についたものは丸洗いをした後にカビ落とし加工をします。
カビが繊維に入り込んだものは、着物をほどいて洗い張りをし、その後で処理をします。
しみもカビも気がついたら、早めに専門店へ相談をしてくださいね。
~染め替え~
染め替えとは染め直しともいい、着物の地色を変えることを言います。
小紋の柄を替えたり、色無地を小紋にしたり、と自由自在です。
もとの柄を生かして地色だけ染め替えることを「地色替え」といいます。染料がしみ込まないように模様の部分に糊を置いて染め直すため、絵羽の部分に箔や刺繍などがあっても大丈夫です。
模様も含めて全体に地色をかぶせる(目引き染)や、現状のものに刺繍などで模様をプラスする方法もあります。